【感想】『ペール・ゴリオ ―パリ物語』

文学YouTuberムーさんが紹介されている動画を見て、面白そうだったので読んでみました。

動画の中でも紹介されていますが、この本を翻訳した鹿島茂さんのあとがきを聞くと、読まずにはいられませんでした…。

「ペール・ゴリオ」と「人間喜劇」の世界が、現実の人生を何回生きても味わえないような豊穣さに満ちていて、これを読んだか読まないかで人生観が変わってしまうことさえあるからです。

私はつねづね、この世には二種類の人間がいると思っています。

バルザックを読んだ人と読まなかった人。バルザックを読んだ人は、読まなかった人に比べて、人生を何倍も濃縮した時間を生きたことになります。

 『ペール・ゴリオ ―パリ物語』

内容<藤原書店HPより>

「人間喜劇」のエッセンスが詰まった、壮大な物語のプロローグ。
パリにやってきた野心家の青年が、金と欲望の街でなり上がる様を描く風俗小説の傑作を、まったく新しい訳で現代に甦らせる。
「ヴォートランが、世の中をまずありのままに見ろというでしょう。私もその通りだと思う。」(中野翠氏評)

印象に残った文章

印象に残った文章を3つ紹介します。

「極彩色の翼をつけた大魔王」

彼は、人がしばしば天使と見まがうあの悪魔が頭上を通り過ぎるのを見てしまったのだ。

この極彩色の翼をつけた大魔王は、宮殿の正面にルビーを撒き散らし、黄金の矢を放ち、女たちに深紅の服を着せ、元はといえば質素な王座を愚かしい輝きで飾るのである。 ―p169

主人公の青年が、社交界とは見た目だけを華やかに飾り立てているということを悟った場面です。

”富の輝きは虚構だ”ということをドラマチックに表現していて、かっこいいです。

一番気に入った文章です。

「一種独特の流体が発散されて」

たとえどれほど粗野な人間でも、その人間が強烈で真実の愛情をおもてにあらわすと、一種独特の流体が発散されて、それが表情を変え、動作に活気をあたえ、声を精彩のあるものにする。 ―p188

本のタイトルにもなっている「ゴリオ爺さん」が、溺愛している娘に会った時にどんな様子になるのかを表した場面です。

ゴリオ爺さんがどんなに娘を愛しており、それが表現される時の感覚がすごく伝わってきます。

「人は滑稽なふるまいや奇矯な行いはけっして容赦しない」

人は悪徳は赦すことはあっても、滑稽なふるまいや奇矯な行いはけっして容赦しないといわれる。 ―p31

「ゴリオ爺さん」は滑稽であったり奇矯であったりするので、住んでいる下宿屋に集まる人たちに馬鹿にされていることを説明している場面です。

人間の嫌なところをズバリ指摘していて、それによってこの物語の登場人物が生き生きと感じられます。

本の世界に夢中になれる本!

この本の一番面白いところは、世界の作り込みだと思います。

その世界を表現するための文章が魅力的だなぁと思って紹介しました。

おすすめなのでぜひ読んでみてください!

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