【感想】『フランケンシュタイン』

以前参加した読書会で、「死ぬまでに読みたい100冊のリストに入っていたので読みました」と紹介されていて、

そういえば読んだことないなぁと思って、面白そうだったので読んでみました。

※ネタバレ注意です

 『フランケンシュタイン』

内容<amazonより>

若き科学者ヴィクター・フランケンシュタインは、生命の起源に迫る研究に打ち込んでいた。
ある時、ついに彼は生命の創造という神をも恐れぬ行いに手を染める。
だが、創り上げた“怪物”はあまりに恐ろしい容貌をしていた。
故郷へ逃亡した彼は、醜さゆえの孤独にあえぎ、彼を憎んだ“怪物”に追い詰められることになろうとは知る由もなかった―。
天才女性作家が遺した伝説の名著。

印象に残った文章

印象に残った文章を3つ紹介します。

「ただひとつはっきりとわかるものといえば、あの明るく輝く月だけだった」

ただひとつはっきりとわかるものといえば、あの明るく輝く月だけだった。月を見つめると、嬉しい気持ちになれた。 ―p208

怪物が生まれてから今に至るまでを回想して語る部分です。

怪物は、生まれてすぐの時は五感が曖昧な状態でした。

「何もかもが混沌としていて、わけがわからなかった」ため、「身体じゅうのあちこちから苦痛が侵入してくるばかりだった」のです。

しかし、月だけは「穏やかな光が忍びやかに天に拡がり、歓びの感覚を伝えて」きたのでした。

この部分を読んで、怪物は感受性豊かで美しい心を持って生まれてきたんだと思いました。

その後、怪物は心の美しい家族を見て、言葉や世界や愛を学びます。

「おぞましさのあまり吐き気すら覚え、恐怖と憎悪の念が甦ってくる」

しかし、眼のまえの相手を改めて眺め、その醜悪な肉塊が動いてしゃべるさまを目の当たりにすると、おぞましさのあまり吐き気すら覚え、恐怖と憎悪の念が甦ってくるのです。 ―p289

フランケンシュタイン博士が怪物と対峙して話し合っている場面です。

怪物は愛されたいと願っていますが、そのおぞましい見た目から人に愛されることはなく、憎まれてしまいます。

それは、抗いようのないことなのです。

「おのれを突き動かす衝動を憎みながらも、それに抗うことができなかった」

実行すれば、死ぬほどすさまじい苦しみを抱え込むことになるのはわかっていたが、おのれを突き動かす衝動を憎みながらも、それに抗うことができなかった。 ―p440

佳境のシーンで、怪物が人を傷つけるに至った苦悩を打ち明けます。

この後、衝動を抑えられなかった自分について怪物はこう言います。

「悔恨の鋭い棘が傷を疼かせ、その痛みは死が傷口をふさぐまで続くのだから」と。

怪物は、愛されたいと心を尽くしても憎まれることしかなく、人を傷つけてしまわざるをえなくなってしまったのです。

それを後悔し続けており、死ぬ以外に苦しまない方法が無いという非情な運命を背負ってしまいました。

この運命は、生まれた時から避けがたいことだったと言えます。

怪物は苦しむために生まれてきたのか…。苦しい気持ちになります。

怪物が人間の愚かさについて教えてくれる本

苦しくなる物語ですが、怪物の成長に優しい気持ちにもなれます。

博士は無責任なようにも思えますが他人事ではなく、自分も似たような過ちはしてしまうだろうと思います。

誤った判断をしてしまう人間というものについて考えさせられます。

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