三宅香帆さんの『人生を狂わす名著50』の中で『悪童日記』という本が次のように紹介されていました。
子どもは純粋無垢なんて思うと痛い目見ます。
たったふたりで世界を生きた、この世でいちばん残酷でクールな双子の物語。
気になったので読んでみたら、双子がめちゃくちゃかっこよくて、善と悪について考えさせられる本でした。
とても面白かったので紹介します。
『悪童日記』
内容<amazonより>
戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。
その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。
人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。
戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。
人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。
印象に残ったところ
印象に残ったところは3つあります。
一人称が「ぼくら」
この本の主人公は双子なのですが、どちらが語っているのかは区別されていません。
常に二人一緒に行動しています。
別々のことをするときは、「ぼくらの一人は~をして、もう一人は~をした」という風に語られます。
このように二人が1つの存在として語られていることが、独特の世界観を作り出している感じがします。
「訓練」
主人公の二人は、お互いを殴って痛みに耐える「訓練」、食事を取らずに我慢する「訓練」、何をされても動かずにじっとしている「訓練」などをして自分たちを鍛えます。
その中で強く印象に残ったのが、母がかけてくれた「私の大切な可愛い子」という言葉を言い合う場面です。
二人は母の元を離れて「魔女」と呼ばれている祖母の家で生活しており、母がかけてくれた言葉を思い出すと涙がこぼれてしまうのです。
しかし、わざとその言葉を何度も聞くことによって意味を薄れさせようとするんです。
感情を表さないようにしている二人が感情を表す数少ない場面で、心を動かされます。
そうまでして二人が目指すものは何なのか?
この後何が起こって二人はどうなるのか?不安と期待がこみ上げます。
人を助ける基準
二人は、人を助ける時と助けない時があります。
基本的には力がない人、お金がない人など、弱い人を助けます。自分たちに優しくしてくれない祖母の仕事でも、積極的に手伝います。
しかし、二人が助けない時があります。
それには明確な意図が感じられますが、理由は明かされません。
この本は三部作になっており、おそらく最後にわかるようです。
賢い二人がなぜ助けなかったのか、続きが気になります……!
希望が感じられるけど、どうなるんだ……!
戦争中で殺伐とした社会情勢の中、力強く生き抜いていく主人公に希望が感じられます。
自分は双子のように賢く生きることはできないだろうけど、人にどう思われても自分が良いと思うことを信じてみようと思いました。
最後がどうなるのか気になりますが、知らないで置いておきたいような気持ちにもなります……!
でもやっぱり読んじゃうだろうな(笑)
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